8月28日のふうえば

8月28日は日曜ふうえば英語時事。

でも今回は英語はグラフで1回出てくるだけ。ほぼ日本語のみでした。

現代経済学をみっちり勉強して、さらには現実の日本経済について検討しました。

以下、当日のレジュメ、そのあとディスカッション要旨と続きます。

◎8月28日のディスカッション要旨

 

1 まず、鈴木(ふうえば理事長)よりレジュメのうち「ミクロ経済学のイロハ」および「マクロ経済学のイロハ」の部分を説明。

 

〇外部不経済についての発言

・大陸の河川が複数国にまたがって流れている国々などと比べたら、日本は外部不経済について、まだ対策をしやすく、モデルをつくれるのではないか。

・コースの定理は交渉する双方に完全な情報があることが前提だが、たとえばリニア新幹線工事をめぐる問題をみてもJR側と住民側とのあいだには情報の非対称がある。また今の経済活動が未来の世代に外部不経済をもたらすとしたら(たとえば環境)どうやって交渉をするというのか? ノーベル賞経済学者の理論ではあるが絵に描いた餅ではないか。

 

2 続いて鈴木よりレジュメのうち「トピック:所得再分配」の部分を説明。ホワイトボードを使い、ローレンツ曲線やジニ係数についても解説した。

 

〇所得再分配についての発言、やり取り

・この調査(所得再分配調査報告書)について、世帯主の年齢階級別にみると子育て世代の年代にとって厳しい結果になっている。しかし、同じ年齢階層でも例えば高齢世帯には国民年金だけが収入源であり月数万円で暮らしている方も多い一方、厚生年金でかなり余裕のある方もいるなど、同じ年齢階級であっても一様でないことに十分注意が必要である。

 

・この調査では年齢階級別×所得階級別のデータはないか?

・厚労省は手持ちであるだろうが、公表された統計表には無い。指摘の年齢階級別×所得階級別のデータは政策立案のために有益だと思う。ただ、そのデータを有意なものとするためには調査客体数を増やす必要があるだろう。

 

・この調査結果をみて絶望的になった(20代の参加者)

・所得再分配は必要だが、私も具体的に、当初所得が私より低い人が再分配後に可処分所得が私より多くなるという逆転事例を知っている。

・子育て世代が厳しくなっていることを示すデータだが、だからといって高齢者への年金を減らすのが良いかというと、それは問題がある。その世代から子どもや孫の世代への贈与という形でのお金の流れがある。所得再分配はそういう形で今でも上手くいっているのではないか?

・確かにそういう世代間の私的なお金の流れはあるが、裕福なおじいちゃん、おばあちゃんを持たない方にとっては何の恩恵もない。そういった持たざる方には公的な再分配というお金の流れが絶対に重要。

 

・再分配も大事。だが、まずはそもそも、当初所得自体をもっと高くする必要がある。近年の日本は非正規が増えるだけで、全体としてみると賃金は他の先進諸国ほど上がっていない。

・厚労省は同一労働同一賃金を進めようとしているが……

・それを企業がちゃんとやっているかとなると……

・非正規でも例えば育休も取れるように制度変更された。しかし企業側にどれだけ、そういったことへの認識があるか。

・所得(当初所得)を増やしていくことは、絶対に必要。

 

3 次に鈴木よりレジュメのうち「トピック:日本の財政状況」の部分を説明。なお、レジュメのうち「日本ではバブル崩壊後、一貫してプライマリーバランスがマイナス」という記述は財務省「日本の財政関係資料」に、「国債等の13.6%は海外が保有する」は財務省「国債等の保有者別内訳」に拠る。

▼財務省「日本の財政関係資料」

https://www.mof.go.jp/policy/budget/fiscal_condition/related_data/202204_01.pdf

▼財務省「国債等の保有者別内訳」

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf

 

〇日本の財政状況についての発言、やり取り

・まず言えることは、プライマリ―バランスの黒字化は短期的には無理ということ。

・長期的にはバランスを取らなくてはいけないけど、短期は無理、ということですか?

・はい。短期目標ではなく長期目標に切り替えるしかない状況だと思う。

・ウクライナ情勢に起因するコスト高もこれからだしね。

 

・やはり民間の経済力。かつては世界の企業ベスト50みたいなところに何社も日本の企業が入っていたが、いまは見るかげもない。力をつけていく必要がある。

 

4 ここで、鈴木よりIMFの発表した各国別の公的セクターのバランスシートのグラフが配られた(下記URL参照。Data(Excel)Figure1.1.)。

https://www.imf.org/en/Publications/FM/Issues/2018/10/04/fiscal-monitor-october-2018

そのうえで鈴木は、2013年以降に政府・日銀の中枢にリフレ派が配されてきたが、インフレターゲットは日本の場合うまくいかなかったと指摘。また一部のリフレ派の学者が「財務省は国債残高など負債のことばかり言うが、日本の公的セクターは資産も多く持っており財政赤字はまったく問題ない」と主張していることに関し、鈴木は次の意見を述べた。

IMFのデータをみても日本の公的セクターの資産と負債のバランスは黒字でなくトントンていど。しかも、その資産のうちのtotal nonfinancial assetsには道路などの換金が不可能なものも含まれており、彼ら(一部のリフレ派の学者)の主張を是とすることはできない。財政赤字は引き続き大きな問題である。

 

5 最後に一言

・改革なくして成長なし

・今日は英語時事なのに英語が少なかった。内容は良かったが。

・経済のことをもっと勉強したくなった。

・輸出を増やすことが大事。

・輸出を増やすという今の意見、そのとおりと思う。国内は人口減で市場は縮小するのだから。

・輸出には製造業がモノをつくり外国に売るだけでなく、外国の方が日本に来てお金を使うという観光がある。これについて文化財保全の会社の社長で菅(すが)政権のときのブレーンでもあったアトキンソンさんの本が鋭い指摘をしている。一読を是非お勧めしたい(デービッド・アトキンソン『新・観光立国論』(東洋経済新報社))。日本の観光にはポテンシャルがある。

 

 

以上。